Bambooboy 髙田社長

京都に生まれ育ち、大学時代に「経営者になりたい」という強い思いを抱いた青年は、新卒で不動産の世界に飛び込んだ。そのわずか2年半後、自ら会社を立ち上げる。

クラウド型の賃貸管理ソフト「ReDocS」(リドックス)を開発・提供するBambooboy株式会社(バンブーボーイ)。その創業者である髙田圭佑社長は、資金も実績もないところから事業を立ち上げ、リドックスを全国約1,400社が利用するサービスへと育ててきた。

サービス開始当初、月額2,980円(税抜き)からという価格は、当時の業界ではむしろ安すぎるがゆえに「本当に実務で使えるのか」「安かろう悪かろうではないか」と疑われることもあった。

そこから十数年。顧客の声と賃貸管理の現場に向き合いながら毎月のように機能開発・改善を重ね、リドックスがカバーする領域は、物件・契約情報の管理から、家賃管理、入金確認、オーナー精算、更新・解約、入居者対応、電子契約へと広がっている。

その成長の裏側には、髙田社長自身が組織づくりの失敗から学びながらたどり着いた「誠実さ」と「仕組み化」という経営哲学がある。

故郷・京都、そして少年時代に打ち込んだバスケットボールへの恩返しにも情熱を注ぐ髙田社長に、創業から現在までの歩みと、これから目指す未来を聞いた。

髙田 圭佑(たかだ・けいすけ)──Bambooboy株式会社 代表取締役社長
1987年、京都府生まれ。2010年、立命館大学を卒業後、不動産を中心とした資産運用に関するあらゆるソリューションを提供する株式会社リオ・ホールディングスに新卒で入社。に新卒で入社。主に1都3県のアパートやマンションの賃貸管理やリーシング業務に従事し、不動産管理の実務を学ぶ。リーシング業務では新人賞を獲得。2012年、Bambooboy株式会社を設立し、代表取締役に就任。

シリコンバレーへの憧れから、不動産業界へ

──「Bambooboy」という社名の由来を教えてください。

髙田 「竹の子のように、まっすぐ、すくすくと天に向かって伸びていけるように」という願いを込めました。

どんなに厳しい逆境があっても、竹のように強くしなやかに、上を向いて成長していきたい。その思いは創業したときから変わっていません。

── 立ち上げる前のご経歴と、経営者を志したきっかけは?

髙田 新卒で東京の不動産コンサルティング会社に入り、資産管理や不動産の有効活用などに関わる仕事を2年半ほど経験した後、会社を立ち上げました。

ただ、就職するときから「絶対に不動産業界で働きたい」と考えていたわけではありません。それよりも大学4年生のころから、「経営者になりたい」「自分で何かをつくりたい」という思いのほうが強かったんです。

── 学生時代から、それほど独立志向が強かったのですね。原体験などはありますか。

髙田 当時、アメリカのシリコンバレーで起業した人たちの奮闘を描いた小説を読みました。ちょうどFacebookなどのIT企業が社会を大きく変え始めていた時期でもあります。

若い人たちが自分たちの力で会社をつくり、それまで存在しなかったサービスを生み出して社会を変える。その姿に強烈な憧れを持ちました。

就職活動で自己分析をしていても、最後に出てきた答えは「自分がリーダーシップをとってビジネスをけん引したい」というものでした。

だったら、できるだけ早く経営の基礎を身につけたい。大きな組織の一部分になるよりも、若いうちから裁量を持って仕事ができる環境に身を置こうと考えました。

結果的に、そこで経験した不動産の実務が、その後のリドックスにつながることになります。

「小さな管理会社が使えるシステムがない」から始まったReDocS

── 起業のきっかけはあったのでしょうか。

髙田 大きなきっかけは、先に独立して不動産管理会社を立ち上げていた先輩の存在です。

仕事の様子を聞いていると、家賃や契約など非常に複雑な情報を管理している。それなのにシステムをほとんど使っていなかったので、「なぜ前の会社のように賃貸管理システムを使わないのですか」と聞いたんです。

すると、「立ち上げたばかりの小さな管理会社が気軽に使えるシステムが、ほとんどない」と言われました。

当時普及していた業務システムには初期費用が数百万円規模のものもあり、パソコンごとにソフトをインストールして利用する製品も多かった。小規模な管理会社にとっては、導入そのもののハードルが高かったんです。

── 大きな業界でありながら、現場にはデジタル化の壁があったと。

髙田 そうですね。私はそれまで、当然みんな何らかの業務システムを使っているものだと思っていたので驚きました。

でも、実際の業務を一つひとつ見ていくと、複雑に見える家賃計算や契約情報の管理も、業務を整理して仕組みに落とし込めば、もっと手頃で使いやすいウェブサービスとして提供できるのではないかと思ったんです。

「いろいろな不動産管理会社がすぐに使える、シンプルでわかりやすいクラウド型の賃貸管理ソフトをつくろう」と考え、リドックスの開発を始めました。

月額2,980円。「安すぎて怪しい」と疑われた創業期

── リドックスがどんなサービスなのか、あらためて教えてください。

髙田 不動産管理会社の日々の賃貸管理業務をクラウド上で行うためのサービスです。

物件や契約者などの基本情報を管理するだけではなく、web申込から家賃管理、入金確認、オーナーへの精算、契約更新や解約、入居者対応、帳票作成、電子契約など、賃貸管理会社が日々行っているさまざまな業務を一つのサービス上でつなげることを目指しています。

Redox
(画像提供=バンブーボーイ)

私たちが大切にしているのは、単純に今まで紙やExcelで行っていた作業をシステムに置き換えることだけではありません。

「もっとシンプルに賃貸管理の仕事ができる方法はないか」というところから業務そのものを考え、リドックスを通じて新しい賃貸管理のやり方を提案していきたいと考えています。

── リリースするまでの道のりはいかがでしたか。

髙田 構想からローンチまでは、半年から1年ほどだったと思います。創業当初はとにかく試行錯誤の連続でした。サービスを公開したからといって、すぐに売上が立つわけではありません。

会社を存続させるために別の仕事をしながら開発を続けていた時期もあります。夢を持って始めたとはいえ、先が見えない期間はやはり大変でした。

── 事業として軌道に乗せるうえで、最も苦労した点は?

髙田 実は、製品をつくること以上に大変だったのが「知ってもらうこと」と「買っていただくこと」でした。

いまでこそクラウドサービスは当たり前ですが、当時はまだ不動産業界で十分に浸透していませんでした。ReDocSは月額2,980円(税抜)からスタートしました。

ところが、この価格が逆に不安を生んでしまったんです。

── 安いことが、むしろ弱点になった?

髙田 そうなんです。

「ここまで安いのは何か理由があるのではないか」「本当に業務で使えるのか」と疑われました。しかも、当時の当社には知名度も実績もありません。

だから、価格の安さを訴えるだけではなく、実際の業務で使えるサービスであることや、どういう考えでサービスをつくっているのかを、一つひとつ伝えていく必要がありました。

検索から出会い、顧客の声をもとに十数年改善を続ける

── その壁を、どのように乗り越えていったのでしょうか。

髙田 大きかったのはウェブサイトです。派手な広告を打つというより、製品の情報や不動産管理に関する情報をウェブ上で丁寧に発信し、SEOにも力を入れました。

やがて「賃貸管理ソフト」などで検索したときにReDocSを見つけてもらえるようになり、全国の不動産会社からお問い合わせをいただくようになりました。

そこから実際に使っていただき、「これなら自分たちでも使える」と評価していただけるケースが少しずつ増えていきました。

ただ、現在のリドックスは、当時のものとはかなり違います。

お客様からいただく声や、賃貸管理の現場で起きている課題をもとに、毎月のように機能の追加や改善を続けてきました。 その積み重ねによって、現在では全国約1,400社に利用いただくサービスになっています。

── 最近はどのような機能開発に力を入れていますか。

髙田 私たちが今取り組んでいるのは、賃貸管理業務を一つひとつ分断された作業としてではなく、一連の流れとしてつなげることです。

たとえば入金確認であれば、銀行の明細と管理している家賃情報を連携させる。契約更新であれば、更新対象者を確認し、案内を送り、必要な手続きを行い、電子契約までつなげる。

電子契約の機能もその一つです。これまで新規契約や更新のたびに契約書を印刷し、郵送して、押印して、返送を待つという作業・過程がありました。こうした業務をできるだけオンラインで完結させることで、管理会社の仕事はもっとシンプルにできるはずです。

単に機能を増やすのではなく、「賃貸管理の仕事そのものをどうすればもっと良くできるか」という視点で、今も開発を続けています。

「他者は自分ではない」──失敗から学んだマネジメント

── 社員が増えるなかで、経営者として痛感したこと、学んだ教訓などはありますか。

髙田 一番大きな学びは、「他者は自分ではない」という、考えてみれば当たり前のことです。

私はもともと「経営者になりたい」「何か新しいことに挑戦したい」という気持ちが強いタイプです。だから、仕事でも細かく指示されるより、大きな仕事を任せてもらった方が楽しい。社員も同じだろうと思っていました。「自由にやっていいよ」「任せるよ」と言えば、みんな喜んで動いてくれるだろうと。

でも実際には違いました。

人によって得意なことも違えば、仕事に求めるものも違う。任されることがモチベーションになる人もいれば、何から始めればいいか分からず不安になる人もいる。

そこを理解せずに「任せることが正しい」と考えていたのは、私自身の失敗だったと思っています。

── その気づきから、マネジメントをどう変えたのですか。

髙田 仕事を任せる「粒度」を意識するようになりました。大きすぎる仕事をそのまま渡せば、「何から手をつければいいか分からない」となります。

逆に、すべて細かく指示してしまえば、ただ指示されたことをこなすだけになってしまう。

その人が今どこまでできるのかを見ながら、少し頑張れば自分で考えて進められるくらいの仕事を渡す。そして成長したら、少しずつ任せる範囲を広げる……。

マネージャーの重要な仕事の一つは、その粒度を見極めることだと考えるようになりました。

4つの行動指針と「仕組み化」の哲学

── 採用では、どのようなところを重視していますか。

髙田 大きく2つあります。

一つは、Bambooboyが大切にしている価値観やカルチャーに共感できるか。

もう一つは、「素直さと謙虚さ」です。

どれだけ経験があっても、「自分のやり方が正しい」と決めつけてしまえば成長は止まってしまいます。周囲の意見に耳を傾けて、必要なら自分を変えられる人は、長期的に大きく成長できると思っています。

── 会社として大切にしている価値観について教えてください。

髙田 バンブーボーイ社では、4つの行動指針を掲げています。

「誠実であること」
「仕組み化にこだわり、仕組みをつくること」
「勇気を持つこと」
「周囲への影響力を意識すること」

この4つです。

── なかでも「仕組み化」を重視しているとか。その理由は?

髙田 リドックスはサブスクリプション型のサービスです。契約していただいたら終わりではなく、10年、15年、20年と長く使っていただくことで成り立っています。

だからこそ、会社として長期間、安定したサービスを提供し続けなければいけません。たとえば、ものすごく優秀な社員が一人いて、その人しかできない仕事が大量にある会社だったとします。

その人が退職した途端にサービスレベルが下がってしまったら、お客様から見れば会社の事情は関係ありません。

だから私たちは、「その人にしかできない仕事」をできるだけなくしていきたい。誰が担当しても一定以上の品質で仕事ができるように、業務を整理し、標準化し、仕組みにする。

私にとって仕組み化は、単なる効率化ではありません。お客様に対して長期的に誠実であり続けるために必要なものだと考えています。

もちろん、仕組みをつくれば終わりではありません。実際に運用してみれば、「ここは分かりにくい」「もっとこうしたほうがいい」という課題が必ず出てきます。それを見つけた人が声を上げ、より良い方法を提案する。そのために必要なのが、私たちが行動指針に掲げている「勇気」です。

そして、自分の仕事や言動が、周囲のメンバーやお客様にどんな影響を与えているのかを考える。それが「周囲への影響力を意識すること」につながっています。

バンブーボーイ
(写真提供=バンブーボーイ)

「誠実であること」「仕組み化にこだわること」「勇気を持つこと」「周囲への影響力を意識すること」。それぞれが独立した考え方ではなく、すべてつながっているものだと考えています。

── 経営哲学の軸をつくるうえで、影響を受けた本などはありますか。

髙田 大学4年生のときに読んだ、水野敬也さんの『夢をかなえるゾウ』の影響は大きいですね。そこで学んだ考え方の一つが、「人が求めていること」と「自分がやりたいこと」を一致させることです。自分がやりたいことだけを追いかけても、誰にも必要とされなければビジネスにはなりません。

一方で、お客様が求めているからといって、自分たちがまったく価値を感じられないことを無理に続けても、長くは続かないと思います。

自分たちが本気で取り組みたいと思えることが、結果としてお客様の役に立つ。その重なるところを探し続けることが、事業を長く続けるうえでは大切だと思っています。

リドックスもまさにそうです。私はもともとITや仕組みをつくることが好きです。そして、以前働いていた不動産管理の現場には、もっと仕組み化できる仕事がたくさんあると感じていました。

自分たちが得意な「IT」と「仕組み化」によって、賃貸管理会社の仕事をもっとシンプルにする。そこが、当社がこれからも追求していきたい領域です。

京都とバスケットボールへの恩返し

── 京都のご出身ですが、故郷は今の活動にどう影響していますか。

髙田 京都は、いまでも深い愛着を持っている大切なふるさとです。会社の拠点は東京ですが、「京都出身です」と話すと、それだけで話が広がることもあります。

そして私にとって京都と同じくらい大きな存在が、バスケットボールです。私は京都の東山高校でバスケットボール部に所属していました。

バスケ
(写真提供=バンブーボーイ)

そこで学んだのは、バスケットボールの技術だけではありません。チームで一つの目標に向かうこと、厳しい状況でもやり抜くこと、自分一人だけでは結果を出せないこと。

今振り返ると、経営者として大切にしている考え方にも、当時の経験はかなり影響していると思います。

── 現在は、京都ハンナリーズのスポンサー活動にも取り組まれています。東京の会社が京都のチームを支援するのはなぜでしょうか。

髙田 私を育ててくれた京都とバスケットボールに恩返しがしたいからです。京都には今も家族や親戚、恩師、部活動の後輩たちがいます。

自分が会社を経営し、少しずつできることが増えてきたなかで、「自分を育ててくれたものに何か返したい」と考えるようになりました。

その一つが京都ハンナリーズへの支援です。

スポーツには、人に夢を与える力があります。特に子どもたちにとって、地元に憧れられる選手やチームがあることは、とても大きな意味があると思っています。

バンブーボーイという社名には、「竹の子のように、まっすぐすくすく成長してほしい」という思いがあります。

会社だけではなく、これから挑戦する子どもたちや若い世代にも、そういう機会が増えてほしい。事業を成長させることと同時に、私たち自身が社会に対してできることも少しずつ増やしていきたいと思っています。

賃貸管理の「なくてはならないインフラ」を目指して

── これからバンブーボーイを、どのような会社にしていきたいですか。

髙田 目指しているのは、他社のシステムを追いかけて、機能の数だけで競争することではありません。賃貸管理の現場で働く人たちが「もっとシンプルに仕事ができる方法」を考え、それを仕組みとして提供する会社でありたい。

たとえば、これまでの賃貸管理では、入居申し込みが来れば情報を転記し、契約書を作成して郵送しています。家賃が入れば銀行の明細を確認し、更新時期が来れば対象者を探して案内を送り、書類を作成しています。

一つひとつを見ると小さな作業ですが、管理する物件や入居者が増えるほど、その積み重ねは大きな負担になります。

そして、「昔からそういうものだから」という理由だけで続いている仕事がたくさんあります。そうした業務を単純にシステムへ置き換えるだけではなく、「そもそも必要か」「もっと簡単なやり方はないのか」「人がやらなくてもいい仕事ではないか」から考えたい。

リドックスを使うことで、管理会社の仕事のやり方そのものが少しずつ変わる。そんなサービスにしていきたいんです。

ITの役割は、いまある仕事を少し速くすることだけではありません。これまで当たり前だった業務そのものを見直して、より良い仕事の流れをつくることができます。そうすれば、本来、人にしかできない仕事に時間を使えるようになります。

賃貸管理の基本業務をしっかり支えながら、その先にある「もっと良い賃貸管理のやり方」をお客様と一緒につくり、最終的には、「リドックスがないと日々の賃貸管理業務が成り立たない」くらい、現場に深く根付いた存在になることが目標です。

バンブーボーイならではの強みを磨きながら、賃貸管理業界にとって「なくてはならないインフラ」と呼ばれる存在を目指します。

メンバー
(写真提供=バンブーボーイ)