
企業は目標達成において非常に重要な役割を果たしており、SDGsを事業活動に取り入れることは、競争力やブランド価値の向上にもつながります。本稿では、企業がSDGsに取り組む意義と実践例、推進するための7つのステップについて解説します。
SDGsとは
SDGs(エスディージーズ/Sustainable Development Goals/持続可能な開発目標)は、2015年に国連で採択された17の目標と169のターゲットで構成される国際的な目標です。これらは、貧困や飢餓の撲滅、教育の普及、環境問題や社会的平等など、地球規模で解決すべき課題に対処するための指針として、2030年までに達成すべき具体的な目標を示しています。
SDGsの特徴は、すべての人々がその恩恵を受けられるように経済、社会、環境の3つの側面が相互に関連し合い、バランスを取ることを目指している点です。国だけでなく、企業や社会、個人もそれぞれの立場で取り組むべき課題として位置づけられていることも特徴と言えるでしょう。
SDGsの17の目標
- 貧困をなくそう
- 飢餓をゼロに
- すべての人に健康と福祉を
- 質の高い教育をみんなに
- ジェンダー平等を実現しよう
- 安全な水とトイレを世界中に
- エネルギーをみんなに そしてクリーンに
- 働きがいも経済成長も
- 産業と技術革新の基盤を作ろう
- 人や国の不平等をなくそう
- 住み続けられる街づくりを
- つくる責任 つかう責任
- 気候変動に具体的な対策を
- 海の豊かさを守ろう
- 陸の豊かさも守ろう
- 平和と公正をすべての人に
- パートナーシップで目標を達成しよう
これらの目標は相互に関連しており、一つの目標を達成することが他の目標の達成にもつながります。
SDGsと企業の関係
企業がSDGsに積極的に取り組むことには、社会的責任を果たすだけでなく、持続可能な成長の実現にも寄与するなど様々なメリットがあります。企業の活動が社会や環境に与える影響は計りしれず、その成果としてSDGsを達成することは、企業の長期的な利益にもつながります。
ブランド価値の向上
消費者は、社会的責任を果たす企業をポジティブに評価する傾向があります。SDGsへの貢献は企業のブランドイメージの強化につながり、顧客のロイヤリティを高めます。
投資家からの評価
持続可能性を重視する投資家が増えており、ESG(環境・社会・ガバナンス)評価が企業評価にも大きな影響を与えるようになっています。そのため、SDGsを意識した経営を行う企業は投資家からの信頼を獲得しやすくなります。
従業員のモチベーション向上
企業のSDGsへの取り組みによって従業員は誇りを持つようになり、仕事のやりがいを感じることができるでしょう。また、SDGsに基づいた活動は人材の獲得や定着にもつながります。
SDGs実現に向けた企業の具体的な取り組み
企業がSDGsを実現するために取り組めることは、以下のように様々な形があります。
1. 環境への配慮(Goal 13:気候変動)
再生可能エネルギーや省エネ技術の導入
生産ラインにおけるエネルギー効率を改善するため、再生可能エネルギーの導入を進める企業が増えています。太陽光発電システムを導入したり、省エネルギー機器を導入したりして、エネルギー消費の削減に取り組んでいます。
リサイクル可能な製品や素材の使用
製品やパッケージに使用する素材に、リサイクル可能なものを積極的に選ぶ企業が増えています。また、製品自体の使用期間を延ばすために耐久性の高い素材を使用する傾向も見られます。
2. 労働環境の改善(Goal 8:働きがいも経済成長も)
ダイバーシティとインクルージョンの推進
現在は多くの企業が女性や障がい者、高齢者、外国人を積極的に採用し、多様なバックグラウンドを持つ人材が活躍できる職場環境を整えています。また、女性リーダーの登用、テレワークやフレックスタイム制度の導入なども増えています。
労働時間の削減とワークライフバランスの向上
長時間労働を減らして従業員が仕事と生活を両立できるように、健康管理プログラムの新設や休暇制度の見直しが進んでいます。また、メンタルヘルスに配慮したサポート体制を整え、従業員の心身の健康を守る取り組みも増えています。
3. 持続可能な製品・サービスの提供(Goal 12:つくる責任 つかう責任)
サステナブルな製品の開発
環境に優しい素材を使用した製品や、省エネルギーを意識した製品の開発が進んでいます。また、使用後のリサイクルが容易な設計にすることで、廃棄物の削減にもつながっています。
サプライチェーンにおける環境負荷の削減
サプライチェーン全体で、環境負荷を削減する取り組みが広がっています。例えばCO2排出量の削減を目指して、原材料の調達から製品の製造、物流に至るまで、効率的な物流システムや環境に優しい素材の使用を推進しています。
4. 地域社会への貢献(Goal 11:住み続けられる街づくり)
環境に配慮した都市開発
持続可能な街づくりを進める企業は、エネルギー効率の高い建物の設計や、再生可能エネルギーを活用した施設の整備を行っています。また、都市部の緑地の拡充や、公共交通機関の利用促進に向けた取り組みなども広がっています。
災害時支援と地域貢献
地元コミュニティへの支援活動も重要な取り組みです。災害発生時に物資の提供や支援活動を行う企業が増えており、それにより地域との強固な連携が築かれています。また、地域の環境保護活動への参加や教育支援などの動きも見られます。
5. 健康と福祉の向上(Goal 3:すべての人に健康と福祉を)
健康的な製品の提供
健康をサポートする製品の提供が進んでおり、例えば栄養価が高い食品や無添加の製品を積極的に販売する企業が増えています。また、消費者に対して健康的なライフスタイルを促進するための情報提供活動なども行われています。
医療アクセスの向上
医療へのアクセスが難しい地域の住民に対して、遠隔医療サービスや低価格の医薬品を提供している企業もあります。このように、世界中の人々が健康的な生活を送るための医療体制の強化が広がっています。
企業がSDGsに取り組むための7つのステップ
企業がSDGsに取り組むためには、まず現状を把握し、自社の事業とSDGsの目標の関連性を見つける必要があります。その上で、実行に向けてしっかりと準備をしなければいけません。
SDGsに関する理解を深める
まずはSDGsの目的や17の目標について理解を深めていきます。自社のビジネスにどのような関連があるかを把握し、社内で共通認識を持てるように、SDGsガイドラインなどを参考にして勉強会などを実施すると良いでしょう。
従業員の意識を高める
SDGsの取り組みを前進させるためには、従業員一人ひとりの意識を高めることが重要です。社内勉強会だけでなく研修や外部のセミナーなどを通じて、従業員の関心を高め、協力を得られる体制を整えます。
自社の現状を分析する
自社の事業活動が環境・社会・経済にどのような影響を与えているか、与えることができるかを分析します。課題と可能性を明らかにし、SDGsの観点からどの領域であれば取り組むことができるかを見極めます。
関連するSDGs目標を選定する
自社の事業と関係が深いSDGsの目標を選び、重点的に取り組む内容を決めます。選定する際は、自社の強みや業界トレンドも考慮しましょう。
具体的な目標を設定する
選んだ目標に基づいて、実現可能な数値目標やスケジュールを含むアクションプランを策定します。例えば、2030年までに再エネ比率50%を達成する、など、できるだけ具体的な目標を設定しましょう。
実行し、見直し・改善する
計画した目標に対してのアクションを全社的に実行します。スタート以降は進捗を確認し、継続的な見直しや改善を行っていきましょう。
成果を公開・報告する
企業は定期的にSDGsに関連した成果を報告することが求められます。これにより、外部のステークホルダー(消費者、投資家、地域社会など)への信頼を高めることができます。
まとめ
企業にとって、SDGsへの取り組みは単なる「社会貢献活動」ではなく、長期的な企業戦略として重要な活動でもあります。社会の変化に柔軟に対応し、持続可能な成長を追求することは企業のブランド力や競争力を高めることにつながり、また社会全体の発展にも寄与します。
これまで積極的に検討してこなかった企業はまずSDGsを深く理解し、世界のために自社が貢献できることを探してみてはいかがでしょうか。