企業の成長戦略として「CSV経営」が注目されています。これは、ボランティアのような社会貢献活動(CSR)とは一線を画し、事業活動を通じて社会課題を解決し、経済的な利益と社会的な価値を同時に追求する経営アプローチです。SDGsやESG投資が浸透し、顧客や従業員の価値観が変化する現代において、CSV経営は企業が持続的に成長するための不可欠な要素となりつつあります。
CSV経営の基本から、中小企業が実践するための具体的なステップ、そして先進企業の成功事例まで、経営者やビジネスリーダーが知るべき知識を解説します。
■ そもそもCSV経営とは?CSRとの決定的な違いを理解する
CSVという言葉は知っていても、CSRと混同している人は少なくありません。まず、CSV経営の核心と、従来型の社会貢献との違いを明確にしましょう。
● CSV経営の核心「共通価値の創造」を3分で理解
CSVとは「Creating Shared Value」の略で、日本語では「共通価値の創造」と訳されます。これは、ハーバード大学経営大学院の著名な教授であるマイケル・E・ポーター氏が2011年に提唱した概念です。
その核心は、「企業の事業活動を通じて社会的な課題を解決することにより、社会的な価値を創造し、その結果として経済的な利益(企業の利益)も生み出す」という考え方にあります。
これまでの多くの企業活動では、「利益追求」と「社会貢献」は別々のもの、ときにはトレードオフの関係にあるととらえられてきました。利益を出すためにはコスト削減が必要で、社会貢献活動はコストがかかる、といった具合です。
しかし、CSVはこの二項対立の考え方を覆します。
たとえば、「地域の高齢者の移動手段がない」という社会課題に対し、ある企業が自社の自動運転技術を活用してオンデマンドの乗り合いサービスを事業として提供したとします。これにより、高齢者の生活の質は向上し(社会的価値)、企業は新たな収益源を得る(経済的価値)。これが「共通価値の創造」です。CSVは、社会課題をコストではなく、新たな事業機会の源泉としてとらえる経営戦略なのです。
● 「守り」のCSR、「攻め」のCSV
CSVとよく比較される概念に「CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)」があります。両者は社会への配慮という点で共通しますが、その本質は大きく異なります。
端的に言えば、CSRがコンプライアンス遵守やリスク管理、寄付活動などを通じて「企業市民」としての責任を果たす「守り」の活動であるのに対し、CSVは社会課題の解決を事業のコアに据えて新たな価値と市場を創造する「攻め」の成長戦略です。
両者の違いを以下の表に整理しました。
| 項目 | CSR(企業の社会的責任) | CSV(共通価値の創造) |
| 位置づけ | 本業とは別の「社会貢献活動」 | 本業そのもの、事業戦略の核 |
| 目的 | 企業の評判維持、リスク管理 | 経済的価値と社会的価値の両立 |
| 動機 | 社会的な要請、責任感 | 新たな事業機会の創出、イノベーション |
| 活動内容 | 寄付、ボランティア、環境保全活動など | 社会課題を解決する製品・サービスの開発 |
| 予算 | コスト、経費 | 投資 |
| キーワード | 責任、義務、評判 | 戦略、機会、価値創造 |
CSR活動も企業にとって重要ですが、多くの場合、本業の利益の中から予算を捻出して行われるため、企業の業績に左右されやすいという側面があります。
一方でCSVは、事業活動そのものであるため、成功すればするほど社会的インパクトと経済的リターンが共に拡大する、持続可能なモデルなのです。
● CSV経営が注目される3つの背景
なぜ今、これほどまでにCSV経営が重要視されているのでしょうか。その背景には、社会や市場における3つの大きな背景・潮流があります。
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SDGsの浸透
2015年に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)は、貧困や飢餓、環境問題、働きがいなど、世界が取り組むべき17の目標を掲げています。これが世界共通の言語となったことで、企業がどのような社会課題の解決に貢献できるのかが問われるようになりました。SDGsは、企業が取り組むべき社会課題の宝庫であり、CSVを実践するうえでの道しるべとなっています。
ESG投資の拡大
投資の世界では、企業の財務情報だけでなく、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)への取り組みを評価して投資先を選ぶ「ESG投資」が主流になりつつあります。世界持続的投資連合(GSIA)によると、世界のESG投資額は年々増加しており、投資家は、社会課題の解決に貢献し、長期的に成長が見込まれる企業を積極的に評価するようになっています。CSV経営の実践は、こうした投資マネーを呼び込むための重要なカギとなります。
消費者の価値観の変化
特にミレニアル世代やZ世代といった若い世代を中心に、製品やサービスの機能・価格だけでなく、それを提供する企業の理念や社会的な姿勢を重視する傾向が強まっています。「どのような社会を実現しようとしているのか」という企業のパーパス(存在意義)に共感し、応援の意味を込めて商品を購入する「エシカル消費」や「応援消費」が拡大しています。企業の社会的な取り組みが、直接的に消費者の選択に影響を与える時代なのです。
■ なぜCSV経営は企業を成長させるのか?中小企業にもたらす4つのメリット
CSV経営は、理想論や慈善活動ではありません。企業に具体的な成長をもたらす、極めて戦略的な経営手法です。中小企業の経営者が享受できるメリットとして、4つ挙げられます。
● メリット1:新たな事業機会の創出と競争優位性の確立
社会が抱える課題の中には、まだ誰も満たせていないニーズが隠されています。たとえば、地方の高齢化と過疎化は深刻な社会課題ですが、見方を変えれば「高齢者向け見守りサービス」「地域産品を活用したEC事業」「空き家を活用した観光事業」といった新たなビジネスチャンスの宝庫です。
自社の強みや技術を社会課題の解決という視点でとらえなおすことで、これまで気づかなかった未開拓の市場を発見できます。そして、その課題を解決するユニークな製品やサービスは、他社にはない強力な競争優位性となり、価格競争からも脱却しやすくなります。
● メリット2:企業ブランド価値とレピュテーションの向上
社会課題の解決に真摯に取り組む企業の姿勢は、顧客や取引先、地域社会からの深い共感と信頼を獲得します。単に「良い製品をつくる会社」から、「社会にとってなくてはならない会社」へと、企業の存在価値そのものを高めることができるのです。
この信頼は、強力なブランドイメージを構築し、企業のレピュテーション(評判)を向上させます。BtoC企業であれば顧客のロイヤリティを高め、BtoB企業であれば取引先との強固なパートナーシップにつながります。結果として、企業の無形資産であるブランド価値は大きく向上し、持続的な成長の基盤となります。
● メリット3:優秀な人材の採用・定着(エンゲージメント向上)
現代のビジネスパーソン、特に優秀な若手層は、給与や待遇といった条件面だけでなく、「その仕事に社会的な意義があるか」「企業のパーパスに共感できるか」を重視する傾向にあります。採用難に悩む中小企業にとって、これは大きなチャンスです。
自社の事業がどのように社会に貢献しているのかを明確に発信することで、企業の理念に共感する意欲の高い人材を惹きつけられます。
また、従業員は自らの仕事が社会の役に立っていると実感することで、仕事への誇りと働きがい(エンゲージメント)が高まります。結果として、離職率の低下と生産性の向上にもつながり、組織全体の活力を生み出します。
● メリット4:ESG投資を呼び込む資金調達力の強化
前述のとおり、ESG投資は世界的な潮流です。金融機関もまた、融資先の事業の将来性やリスクを評価する際に、企業のサステナビリティへの取り組みを重視するようになっています。
CSV経営を実践し、事業を通じた社会課題解決への貢献度や環境負荷の低減といった非財務情報を積極的に開示することで、「持続的な成長が見込める企業」として評価され、金融機関からの融資や投資家からの資金調達において有利になる可能性が高まります。これは、事業拡大や設備投資を目指す企業にとって、大きなアドバンテージとなるでしょう。
■ 【事例で学ぶ】国内外のCSV経営成功パターン
CSV経営をより具体的にイメージするために、国内外の先進企業の事例を見ていきましょう。大手企業だけでなく、中小企業や京都企業の取り組みにも焦点を当てます。
● 【海外事例】ネスレに学ぶ「栄養・水・農村開発」
CSV経営の代表格として必ず名前が挙がるのが、スイスの食品・飲料会社ネスレです。同社は、事業の根幹に関わる「栄養」「水」「農村開発」をCSVの重点分野として掲げています。
たとえば、発展途上国のカカオ農家に対して、栽培技術の指導や病害に強い苗木の提供といった支援を行うことで、カカオの品質と収穫量を向上させています。これにより、農家は安定した収入を得ることができ(社会的価値)、ネスレは高品質な原料を安定的に調達できる(経済的価値)。まさに共通価値を創造するサイクルが生まれています。他にも、製品の栄養価を高めることで人々の健康に貢献するなど、事業全体でCSVを体現しています。
● 【国内大手事例】キリンに学ぶ「健康」を軸とした事業展開
日本の大手企業であるキリンホールディングスも、CSV経営を明確に打ち出しています。同社は「酒類メーカーとしての責任」を果たしたうえで、「健康」「地域社会・環境」「酒類文化」という3つの社会課題に取り組んでいます。
特に注目すべきは「健康」の分野です。長年の免疫研究の成果を活かして開発したプラズマ乳酸菌を含む免疫ケア製品「iMUSE」(イミューズ)ブランドは、人々の健康維持に貢献したいという社会的価値と、新たな収益の柱を確立するという経済的価値を両立させた象徴的な事例です。アルコール飲料で培った発酵・バイオテクノロジーという強みを、健康という社会課題の解決につなげ、新たな市場を切り拓いています。
● 【中小企業事例】地域課題を解決し、成長する企業の取り組み
CSV経営は、地域に根差す中小企業こそ、その真価を発揮しやすいと言えます。
たとえば、ある地方の食品加工会社は、地域の農家が抱える「規格外野菜の廃棄」という課題に着目しました。これまで捨てられていた野菜を買い取り、独自の加工技術で付加価値の高いスープやジャムに製品化。新たな特産品として販売することで、食品ロスを削減し(社会的価値)、農家の収入を安定させ、自社の売上も拡大させました(経済的価値)。
また、ある伝統工芸の工房は、後継者不足と需要の低迷に悩んでいました。そこで、伝統技術を活かしつつ、現代のライフスタイルに合うモダンなデザインの製品を開発。さらに、海外の展示会に積極的に出展し、その背景にある職人の想いやストーリーを発信することで、新たな顧客層を開拓しました。伝統文化の継承(社会的価値)と、海外市場への進出(経済的価値)を同時に実現した好例です。
● 【コラム:京都企業の挑戦】CSVの視点で見ると面白い京都の企業
古くから「三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)」の精神が根づき、「企業は社会の公器である」という考え方が息づく京都には、CSV経営のヒントとなる企業が数多く存在します。
分析・計測機器メーカーの島津製作所は、「科学技術で社会に貢献する」を社是としています。この創業以来の理念は、まさに事業を通じて社会課題を解決するというCSVの考え方そのものです。環境測定や医療診断、新素材開発といった同社の事業は、地球環境の保全や人々の健康といった社会全体の価値向上に直結しています。
同じく計測機器メーカーの堀場製作所も、「おもしろおかしく」というユニークな社是のもと、自動車の排ガス測定装置や水質分析装置などを通じて、世界の環境規制やエネルギー問題の解決に貢献してきました。
また、小川珈琲は、サステナビリティへの取り組みとして知られています。有機JAS認証の取得や、渡り鳥の生息地を守る「バードフレンドリー」認証コーヒーの販売などを通じて、生産者や環境に配慮した事業活動を展開。高品質なコーヒーを提供すること(経済的価値)と、持続可能なコーヒー生産を支えること(社会的価値)を見事に両立させています。
■ 【実践ガイド】中小企業が明日から始めるCSV経営5ステップ
CSV経営は、一部の大企業だけのものではありません。ここでは、中小企業が自社の状況にあわせてCSV経営を導入するための、現実的な5つのステップを紹介します。
● Step 1:自社の強み(本業)と社会課題のマッピング
自社の「棚卸し」から始めます。事業内容、技術、製品、サービス、人材、ノウハウ、地域とのつながりといった「自社の強み(アセット)」をすべて洗い出してください。
次に、それらの強みを活かせば、どのような社会課題を解決できるかを考えます。このとき、SDGsの17の目標と169のターゲットが非常に参考になります。「自社の〇〇という技術は、SDGsの目標7『エネルギーをみんなに そしてクリーンに』に貢献できるかもしれない」といったように、自社の強みと社会課題を結びつけていきます。この作業を「マッピング」と呼びます。
● Step 2:取り組むべき重要課題(マテリアリティ)の特定
マッピングによって浮かび上がった複数の社会課題の中から、自社が優先的に取り組むべき「重要課題(マテリアリティ)」を特定します。
選定の基準は、「自社の経営理念やビジョンとの親和性」と「事業としてのインパクトの大きさ(社会と自社双方にとって)」の2つの軸で考えます。全方位的に取り組むのではなく、自社らしさを発揮でき、かつ最も大きな共通価値を生み出せそうなテーマに絞り込むことが成功の鍵です。このプロセスには、経営陣だけでなく、現場の従業員も巻き込むことが理想的です。
● Step 3:具体的な事業計画とKPI(重要業績評価指標)の設定
重要課題を特定したら、それを解決するための具体的な事業プランへと落とし込みます。新しい製品・サービスの開発、既存事業のプロセスの見直しなど、具体的なアクションを計画します。
その際、必ずKPI(重要業績評価指標)を設定することが重要です。ポイントは、「売上高」や「利益率」といった従来の経済的指標だけでなく、社会的価値を測るKPIもあわせて設定することです。たとえば、「CO2削減量」「地域の雇用創出数」「顧客の健康改善率」「サプライヤーの収入向上額」など、取り組みの内容に応じて設定します。これにより、活動の進捗を客観的に評価できるようになります。
● Step 4:社内外へのパーパス(企業の存在意義)の浸透
なぜ自社がその社会課題に取り組むのか。その根底にある想いや志を、「パーパス(企業の存在意義)」として明確な言葉で定義します。
そして、そのパーパスを社内に浸透させ、全従業員の共感を得るための活動(インナーブランディング)を行います。同時に、ウェブサイトや会社案内、SNSなどを通じて、顧客や取引先、地域社会といった社外のステークホルダーにも積極的に発信し、共感の輪を広げていくことが重要です。パーパスは、すべての活動の拠り所となる北極星のような役割を果たします。
● Step 5:実行・効果測定・情報開示(PDCAサイクル)
計画(Plan)を実行(Do)に移し、設定したKPIに基づいて進捗をモニタリングし、効果を測定(Check)します。そして、その結果から得られた学びや課題をもとに、次の計画を改善(Action)していく。このPDCAサイクルを粘り強く回し続けることが不可欠です。
また、活動内容や成果を、ウェブサイトや統合報告書、イベントなどを通じてステークホルダーに積極的に情報開示することも重要です。透明性の高い情報開示は、企業の信頼性を高め、新たな協力者や応援者を呼び込むきっかけにもなります。
■ CSV経営を成功に導くための3つの注意点
CSV経営は大きな可能性を秘めていますが、実践するうえでの落とし穴も存在します。よくある失敗を避け、着実に成果を出すための注意点を解説します。
● 注意点1:「CSVウォッシュ」と批判されないために成果を誠実に示す
「ウォッシュ」とは「ごまかす」「うわべを飾る」といった意味です。実態が伴わないのに、イメージ向上のためだけに社会貢献を謳うことを「CSVウォッシュ」または「グリーンウォッシュ」と呼びます。たとえば、環境に配慮しているように見せかけて、実際には環境破壊につながる事業を続けている、といったケースです。
こうした見せかけの活動は、一度見抜かれると、かえって企業の信頼を大きく損ないます。CSVウォッシュと批判されないためには、本業との一貫性を持ち、Step3で設定したKPIのような客観的なデータに基づいて成果を誠実に示すことが重要です。
● 注意点2:短期的な利益を追い求めすぎない
社会課題の解決は、一朝一夕に実現できるものではありません。新しい市場の創造や、ビジネスモデルの変革には時間がかかります。そのため、CSVへの取り組みがすぐに経済的な利益に結びつくとは限りません。
四半期ごとの業績ばかりを追いかけていると、成果が出る前に「儲からないから」と諦めてしまうことになりかねません。CSV経営は、数年先、数十年先の企業の未来を創るための「投資」であるととらえ、長期的な視点で粘り強く取り組む姿勢が求められます。
● 注意点3:経営トップが強力にコミットする
CSV経営は、CSR部や経営企画室といった一部の部署だけで進められるものではありません。既存の事業モデルや評価制度、組織文化そのものを見直す必要がある、全社的な経営改革です。
だからこそ、経営トップがCSVの重要性を誰よりも深く理解し、「自社は社会課題の解決を通じて成長する」という強い意志とビジョンを社内外に示し続けることが不可欠です。リソースの配分、部門間の調整、そして時には短期的な利益と相反する決断を下す場面もあるでしょう。経営トップの強力なリーダーシップとコミットメントなくして、CSV経営の成功はありえません。
■ CSV経営に関するよくある質問(Q&A)
経営者が抱きがちなCSV経営に関する疑問を、よくある質問と答えという形でまとめました。
● Q1. 結局のところ、CSV経営は儲かりますか?
A1.長期的には儲かる可能性が高いと言えますが、短期的な利益だけを追求するものではない、という点はご理解ください。
社会課題の解決を通じて新たな市場を創造し、ブランド価値や顧客ロイヤリティを高め、優秀な人材を惹きつけることで、企業の競争優位性が向上し、持続的な利益成長につながるでしょう。
● Q2. 顧客が法人のBtoB企業でも取り組めますか?
A2.もちろん可能です。BtoB企業だからこそ取り組めるCSVは数多くあります。たとえば、自社の製造プロセスにおける環境負荷を低減すること、サプライチェーン全体での人権配慮や労働環境の改善に貢献すること、取引先の生産性や安全性を劇的に向上させる製品・サービスを開発することなどが挙げられます。顧客企業のサステナビリティ向上に貢献することも、立派なCSVです。
● Q3. 専門の部署や担当者が必要ですか?
A3.最初は必ずしも専門部署は必要ありません。特に中小企業の場合は、まず経営トップや経営企画部門が主導し、各事業部門のキーパーソンを巻き込みながらプロジェクトベースで始めるのが現実的です。活動が本格化し、全社的な取り組みに発展する段階で、専任の担当者や部署の設置を検討するとよいでしょう。
● Q4. まず、何から手をつければいいですか?
A4.もし迷ったら、まずは「Step 1:自社の強みと社会課題のマッピング」から始めてみてください。従業員を交えて、「私たちの仕事は、世の中のどんな役に立っているだろうか?」という問いをテーマに、ワークショップを開くのもよいでしょう。自社の事業が、気づかないうちに社会課題の解決に貢献している部分が必ずあるはずです。その「接点」を見つけ、意識することからがCSV経営の第一歩です。
■ CSV経営は、未来を創る企業の「新たな羅針盤」である
最後に、重要なポイントを振り返ります。
- CSV経営は、事業を通じて社会課題を解決し、経済的利益と社会的価値を両立させる経営戦略である。
- CSRが「守り」の活動であるのに対し、CSVは「攻め」の成長戦略と位置づけられる。
- 新たな事業機会の創出、ブランド価値向上、人材獲得など、企業に多くのメリットをもたらす。
- 成功の鍵は、本業との一貫性、長期的な視点、そして経営トップの強い意志にある。
CSV経営は、もはや一部の意識の高い企業だけが取り組む特別な活動ではありません。変化が激しく、未来の予測が困難な時代において、自社が社会の中でどのような役割を果たすべきかを示し、持続的な成長へと導く「新たな羅針盤」です。事業と社会の未来をつなぐ、はじめの一歩を踏み出しましょう。