事業の成長を加速させたい、新しい設備を導入したい、DXを推進したい──。
こうした挑戦の際に、返済不要の資金で事業者を後押しするのが「補助金」です。
しかし、「手続きが複雑そう」「どんな補助金があるかわからない」といった理由で、活用をためらっている経営者も多いのではないでしょうか。
本記事では、補助金申請の全体像を「8つのステップ」に分解し、情報収集から入金までの流れを徹底解説します。
さらに、採択率を上げるコツや専門家の活用法まで網羅。この記事を読めば、補助金申請へのハードルが下がり、事業成長のチャンスをつかむための一歩を踏み出せるはずです。
意外と知らない?補助金と助成金の違い
補助金の情報収集を始める前に、よく混同されがちな「助成金」との違いを明確にしておきましょう。どちらが目的に合っているかを知ることが、効率的な資金調達の第一歩です。
「補助金」は、主に経済産業省などが管轄し、国の政策目標(事業拡大、IT化など)に沿った事業者の新たな取り組みを支援するものです。予算や採択件数に上限があり、提出された事業計画が審査で選ばれなければ受給できないため、難易度は高いといえます。
一方、「助成金」は主に厚生労働省が管轄し、雇用の安定や労働環境の改善などを目的とします。定められた要件を満たせば原則受給できるため、難易度は低いのが特徴です。
「事業そのものを成長させたいなら補助金」「雇用の安定など、組織(人)を強くしたいなら助成金」と覚えておくとよいでしょう。
| 項目 | 補助金 | 助成金 |
| 管轄 | 経済産業省、地方自治体など | 厚生労働省 |
| 目的 | 政策目標の達成(事業拡大、IT化など) | 雇用の安定・促進 |
| 審査 | あり(事業計画などを厳しく審査) | なし(要件を満たせば原則受給) |
| 受給難易度 | 高い(予算や採択件数に上限あり) | 低い(要件を満たせば受給可能) |
| 申請期間 | 公募期間が短く、限定的 | 通年で募集していることが多い |
| 代表例 | 事業再構築補助金、ものづくり補助金 | 雇用調整助成金、キャリアアップ助成金 |
【完全版】補助金申請から入金までの全8ステップ
ここからは、補助金申請の具体的な流れを8つのステップで解説します。各ステップの要点と注意点を押さえていきましょう。
Step 1 【情報収集】自社に合う補助金を見つける
成功の第一歩は、自社の事業に最適な補助金を見つけることです。中小企業向けの補助金を探すなら、中小企業基盤整備機構が運営する「J-Net21」や、国の中小企業向け支援サイト「ミラサポplus」が便利です。
候補が見つかったら、必ず「公募要領」を熟読してください。ここには、補助金の目的、対象者、対象経費、申請期間、そして最も重要な審査項目など、すべてのルールが書かれています。
Step 2 【最重要】事業計画の策定──採択を左右する
事業計画書は、補助金申請の成否を分ける心臓部です。審査員はあなたの会社を何も知りません。その相手に、税金を投じる価値のある事業だと納得させなければなりません。
説得力のある計画書には、論理的なストーリーが不可欠です。以下の要素を盛り込み、自社の熱意と事業の将来性を伝えましょう。
- 自社の強み: 事業内容、技術力、実績など
- 市場の課題: 顧客や社会が抱える課題は何か
- 課題解決策: 補助金を活用し、その課題をどう解決するのか
- 実施計画: 具体的なスケジュールや資金計画
- 将来性・波及効果: 事業成功による自社や社会への好影響
Step 3 【準備】必要書類の準備──漏れなく完璧に
事業計画と並行して、添付書類を準備します。書類の不備は審査の対象外となるため、細心の注意を払いましょう。
現在の補助金申請は電子申請が主流であり、それには「GビズIDプライムアカウント」が必須です。取得に2〜3週間かかるため、補助金を検討し始めたら真っ先に申請してください。
そのほか、一般的に以下の書類が必要となります。
| 書類の種類 | 内容・注意点 |
| 事業計画書 | 補助金指定の様式で作成。 |
| 決算書 | 直近2〜3期分。 |
| 履歴事項全部証明書 | 法人の場合。発行後3ヵ月以内のもの。 |
| 本人確認書類 | 個人事業主の場合。 |
| 納税証明書 | 税金の未納がないことの証明。 |
| 見積書 | 導入する設備やシステムの相見積もり。 |
Step 4 【申請】いよいよ提出!電子申請のポイント
書類がすべて揃ったら、電子申請システム「jGrants」(Jグランツ)で申請手続きを行います。24時間申請できますが、締切間際はアクセスが集中し、システムトラブルが起こる可能性があります。締切の2〜3日前には提出を終えるよう、余裕を持ったスケジュールを心がけましょう。
Step 5 【審査】結果を待つ審査期間と面談の有無
申請後は、審査結果を待ちます。期間は補助金によりますが、申請締切から1〜3ヵ月が目安です。補助金によっては、事業計画の内容を深掘りするための面談が行われることもあります。面談の通知が来たら、自身の言葉で事業への想いを語れるよう、計画書を再度読み込み準備しておきましょう。
Step 6 【採択】交付決定通知
審査を通過すると「採択通知」が届きますが、これはまだ“内定”段階です。この後、正式な手続きを経て「交付決定通知」を受け取ります。
ここで最も注意すべき点は、交付決定日より前に発注・契約した経費は、補助金の対象外になるということです。採択されたからと安心し、フライングで発注しないよう絶対に注意してください。
Step 7 【実行】事業実施と実績報告
交付決定後、計画に沿って事業を開始します。事業期間中は、見積書、発注書、請求書、振込控えなど、お金の流れがわかるすべての証拠書類(エビデンス)を完璧に保管してください。事業終了後、これらの証拠書類を添付した「実績報告書」を提出します。
Step 8 【入金】ついに補助金の受領
実績報告書の内容が承認されると、補助金額が最終確定し、ようやく指定口座に入金されます。補助金は事業実施後の「後払い」(精算払い)が原則です。
申請から入金まで1年以上かかるケースも珍しくないため、事業実行期間中の資金繰り計画を事前に立てておくことが極めて重要です。
採択率が劇的に変わる!補助金申請3つの重要ポイント
ただ申請するだけでは、競争の激しい補助金を勝ち取るのは困難です。採択率を上げるために、特に意識すべき3つのポイントを紹介します。
ポイント1 公募要領を読み込み、審査項目を徹底理解する
公募要領に書かれている「審査項目」は、採点基準そのものです。審査項目の一つひとつに対し、自社の事業計画がどのように貢献できるかを明確にアピールすることで、評価は格段に上がります。公募要領を読み込む作業は、採択への最短ルートです。
ポイント2 加点項目を一つでも多く満たす努力をする
多くの補助金には、特定の要件を満たすことで評価が上乗せされる「加点項目」が設けられています。たとえば「賃上げ計画の策定」や「パートナーシップ構築宣言への登録」などがこれにあたります。一つでも多くの加点を積み上げることが、ライバルとの差をつける上で非常に有効です。
ポイント3 ストーリー性のある事業計画で想いを伝える
ロジックはもちろん重要ですが、審査員の心を動かす「この事業を応援したい」と思わせるストーリーも大切です。「なぜこの事業に取り組むのか」という経営者自身の想いを、具体的な言葉で計画書に落とし込みましょう。事業への熱意が伝われば、計画書の説得力は大きく増します。
- 【コラム】「不採択通知」は宝の山?次に繋げる改善点の見つけ方もし不採択となっても、その結果は次の成功への糧となります。補助金によっては、不採択の理由をフィードバックしてくれる場合があります。その客観的な指摘は、自社の事業計画の弱点を教えてくれる貴重なアドバイスです。改善点を次に活かせば、採択の可能性は大きく高まります。
専門家は活用すべき?申請代行のメリット・デメリット
時間やノウハウがなく不安な方は、中小企業診断士や行政書士といった専門家への依頼も有効な選択肢です。メリット・デメリットを理解し、賢く活用しましょう。
申請代行を依頼する3つのメリット
- 採択率の向上: 専門家は採択される計画書のポイントを熟知しており、採択率の向上が期待できます。
- 時間と手間の削減: 煩雑な書類作成から解放され、経営者は本業に集中できます。
- 専門的な知見の活用: 申請を通じて、経営課題の整理や事業のブラッシュアップにつながります。
知っておくべき2つのデメリット
- 費用の発生: 「着手金(5〜20万円)」と「成功報酬(採択額の10〜20%)」が相場です。
- 丸投げはNG: 専門家はあくまで伴走者です。事業の核となる想いや内容は、経営者自身が考え、伝える必要があります。専門家と二人三脚で作り上げる姿勢が不可欠です。
良い専門家を見つけるには、費用だけでなく、申請したい補助金での採択実績や、円滑にコミュニケーションがとれる相性なども含めて判断しましょう。
補助金申請に関するよくある質問(Q&A)
Q1. 申請すれば必ず補助金はもらえますか?
A1. 必ずもらえるわけではありません。補助金は優れた事業計画を選ぶ「審査」があるため、不採択になる可能性もあります。要件を満たせば原則もらえるのは「助成金」です。
Q2. 個人事業主や創業したばかりでも申請できますか?
A2. ほとんどの補助金が対象としています。創業者向けの補助金も数多くありますので、公募要領の対象者欄を確認してください。
Q3. 複数の補助金に同時申請は可能ですか?
A3. 可能です。ただし、同じ事業内容(例:Aという設備の購入)で複数の補助金を受け取ることは不正受給にあたるためできません。
Q4. 採択されたらすぐ現金が振り込まれるのですか?
A4. いいえ。補助金は原則「後払い」です。事業が完了し、経費の支払いを終えた後の精算払いとなります。資金繰りの計画が非常に重要です。
Q5. パソコンや車の購入費も対象になりますか?
A5. 汎用性が高い品目は対象外となるケースが多いです。事業に必須であるという明確な理由がない限り、認められにくいと考えましょう。
【まとめ】補助金の流れを理解して、事業成長のチャンスをつかもう
以上、補助金申請の全体の流れを8つのステップに分けて解説しました。
【記事の要点まとめ】
- 補助金申請は情報収集から入金まで8つのステップで進む。
- 採択のカギは、熱意と具体性のある「事業計画書」にある。
- 補助金は原則「後払い」のため、事業実行のための自己資金が必要。
- 専門家のサポートも視野に入れ、自社に合った方法を選択することが重要。
補助金申請は簡単ではありませんが、そのプロセスは自社の事業を見つめ直し、磨き上げる絶好の機会となります。まずは自社で使えそうな補助金がないか、情報収集から始めてみましょう。